やわらかな陽の光がステンドグラス越しに入り込む、静かな教会。純白のドレスに身を包んだ少女と、スーツを着た男性が、2人顔を合わせて立っていた。
「プロデューサー」
『…どうした?』
「雛菜ね、今すっごくすっごくしあわせだよ」
『そうか…』
「いつも雛菜の為に、頑張ってくれてありがとう。プロデューサーの事、世界で一番大好きだよ」
「これからもずっと、ずっと雛菜のそばにいてね。プロデューサーとしてじゃなくて、雛菜の大切な人として、ね」
『雛菜…』
『撮影の休憩中に俺をからかうんじゃない』
「あは〜♡ 怒られちゃった〜♡」
今回雛菜に来た仕事は、ウェディングドレスの撮影だった。女の子ならば誰もが憧れるシチュエーションをまとった雛菜は、いつにも増して機嫌が良い。
『ほら、撮影再開するってさ。スタンバイするぞ』
「は〜い♡」
「…プロデューサーの事、からかったんじゃないんだけどな〜」
撮影が終わり、いつもの服に着替えた雛菜。彼女の手には一枚の写真。ドレス姿のまま、大好きなプロデューサーとのツーショット。
「ね〜、プロデューサー」
『どうした?』
「プロデューサー、雛菜と写真撮る時にちょっとだけ泣いてたよね〜? なんで〜?」
『うっ…!』
誰よりもそばで雛菜の幸せそうな顔を見ていたプロデューサー。いつしか彼は、涙していた。本人としては上手く隠したつもりだったが、当の雛菜には易々とバレていたようだ。
『い、いや…。雛菜がいつか結婚して、晴れ舞台で幸せそうにしてるのを想像しちゃって…。思わず感極まっちゃってさ』
『…はは、いい大人が恥ずかしいな』
「そんな事ないよ〜。プロデューサー、雛菜の事考えて泣いてくれたんでしょ〜? だったら雛菜、すっごく嬉しいな〜♡」
『…そう言ってくれると助かるよ』
プロデューサーは不器用そうにはにかんだ。
「雛菜が将来結婚式する時は、プロデューサーも一緒だよ〜♡」
『ああ、そうだな。…その時俺は雛菜の隣に、な』
「えっ…!」
『なんてな、ちょっとからかってみただけさ』
「! む〜っ!!」
むくれる雛菜。ポカポカと優しい拳を叩きつけてくる。
『い、いてて。悪かったって、変な事言って』
『…雛菜?』
「むす〜…」
プロデューサーが雛菜の本当の気持ちに気付くのは、これよりもっと先の話。
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